さわや書店 おすすめ本
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no.5172022/8/22UP
本店・総務部Aおすすめ!
こころ 夏目漱石/新潮文庫
時代性を感じさせる。明治、大正、昭和、平成、そして現在の令和。自由を謳歌する現代日本人の「こころ」は本書を読み、何を思う。
主人公である「私」と先生との物語である。先生と言っても教師をしている訳ではなく、主人公がただ、先生と呼んでいるだけだ。実際に何をして、何を考えているのかは分からないまま、後半、先生からの長い手紙の独白だけで締めくくられる。物語の途中では明治天皇の崩御、乃木大将の死に触れ、そして手紙は先生の友人「K」の死を詳細に語る。全ては主観の話で、客観的な真実は示されないが、個人のこころの動きと葛藤を追うだけで、先生とその時代の真摯な思慮と覚悟を想った。どうしても今の風潮と比べてしまう。
先日、映画『サバカンSABAKAN』を観に行く。昭和の時代を感じさせるいい映画だった。ただ、『スタンド・バイ・ミー』と同じように、子どもが観てもこの良さは伝わらないだろうなとも思う。今の子どもも30年後ぐらいに今を振り返った時に、故郷らしさがまだ色濃く残るいい時代だったと、そう思えるものなのかもしれない。