さわや書店 おすすめ本

  • no.514
    2022/7/21UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    金庫番の娘 伊兼源太郎/講談社文庫

    いかにも実際にありそうな権力争い、派閥の力学、政治とカネ、選挙の攻防、東京地検特捜部、エネルギー問題などがリアル感をもって描かれている。きれい事だけでは務まらない金庫番という、ある意味ダークサイド的な役目は、よほどの信頼関係がなければ成立しない。単なる仕事としてだけでなく、汚れを一身に引き受けてでも実現させたい未来を見据え、しっかりと理想を共有しているからこそできるものなのだろう。
    それにしても、特別支持していたわけでも何でもないのだけれども、先日亡くなられた安倍元首相の事件はショックだった。政治家としての評価は立場や見方の違いによっていろいろあるとは思うが、個人的には、オバマ大統領を広島に招き、自らは真珠湾へ公式訪問したことが印象に残っている。この一連の動きと“和解の力”というメッセージを世界へ発信した事については、他の人では実現できなかったように思う。
    人間には必ず光と影があり、そのどちらかのみという事はありえない。強い光の下では濃い影ができる。結局、プラマイどちらが大きいかという結果が政治家としての価値だろう。