さわや書店 おすすめ本
-
no.4982022/3/29UP
本店・総務部Aおすすめ!
ベルリンは晴れているか 深緑野分/ちくま文庫
戦争はいずれにしても損失の方が大きい。自国に誇りを強く持つ人ほどその後の価値観や人生を大きく狂わされてしまう。日本も戦前から戦後の大人の変わり様は、子どもの目にはどのように映っただろうか。
ナチス・ドイツ敗戦直後のベルリンから本書の物語は始まる。この本編とは別に主人公の少女が生まれてから終戦までのストーリーを幕間として所々に挿入されている。ミステリーとしての解答はこの幕間の方にあるのだが、そんな事には関係なくそれぞれの話に引き込まれる。
戦争の被害は、外部から受けるものだけでなく、一般市民も含めた内部によっても引き起こされる。狂信的な集団であればあるほど、常に互いの疑心暗鬼は付きまとうのだろう。今のロシア・ウクライナでも表の戦争だけではなく、裏での特殊部隊やらスパイやらも暗躍しているのだと思う。そんな中で、子どもが大人を見る目の直感や善悪の感覚は、意外と一番正しいのかもしれない。「ベルリンは晴れているか」このタイトルがまた、いい。
最後にひとつ。先日観に行った『ベルファスト』。とてもいい映画だった。