さわや書店 おすすめ本

  • no.489
    2021/12/16UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    酔人・田辺茂一伝 立川談志/中公文庫

    稀代の天才落語家・立川談志から見た、紀伊國屋書店創業者・田辺茂一伝。酒席での他愛もない会話の端々から人生の師と仰ぎ、その後の落語や考え方にも大きな影響を与えた人物なのだろうと想像できる。人間を見抜く能力が、双方ともに並外れている。
    本書からは田辺茂一社長の本当の姿は見えて来ない。あくまでも若き日の立川談志から見た田辺茂一像だ。だが、だからこそ、そこには著者特有の歯に衣着せぬ人間像と、リアリティがある。
    今は時代の流れもあり、異質な考え方や言動などは排除され、良いも悪いも平坦化、標準化される。本当のことを言う人は年々少なくなってくるが、本当のことというのはいつの時代でも、どう表現しようとも変わらないものだと思う。
    立川談志没後10年か。この10年で世の中は大きく変わった。それにしても、早いなぁ。