さわや書店 おすすめ本
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no.4232020/10/1UP
本店・総務部Aおすすめ!
おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子/河出文庫
『南極料理人』『横道世之介』などの沖田修一監督で、11月6日より劇場公開される本書の映画が楽しみだ。
人生は一度きりでやり直しがきかない。老いも別れも悲しみも、言葉では判ったような顔をしていても、実際の出来事による衝撃は全て誰もが初めての経験になる。タイトルの『おらおらでひとりいぐも』という言葉は、主人公が導き出すひとつの哲学というか悟りの境地に近い。喜びの中には深い悲しみが内包され、逆に深い悲しみの中にも喜びが内包されている。そのあたりの微妙な肌触りや気配のようなものを表現するのに、最もしっくりくるのが方言だったのだろう。
本書に出てくる「食べらさるー」という方言も、なんとなく雰囲気は伝わっているだろうか。関係ないが「書かさる・書かさらない」という表現も単に「書ける・書けない」とは微妙にニュアンスが違う。岩手県周辺では方言と思っていない人も多いはずである。
方言はさておき、年をとると独り言が多くなるのは、内なる何かと絶えず対峙し葛藤するものが増えるからかもしれない。それは見方によっては崇高な状態とも言える。