さわや書店 おすすめ本

  • no.411
    2020/8/15UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    幸福について ―人生論― ショーペンハウアー/新潮文庫

    あまりにも後ろ向きな幸福論のため、このような考え方は受け入れられないという人もいるだろう。著者もこれが全て正しいと思って書いている訳ではないような気がする。哲学者特有の小難しい言い回しなどもあるが、そんな些細なところは読み飛ばしていいと思う。ただし所々に、核心を突いているなあと感じる見解が込められている。幸福という、実体があいまいで雲を掴むような題材でも、徹底したリアリズムを追及している。
    現代はコミュニケーションツールの拡大によって、疲労や憎悪までをも拡大させてしまった。精神的なバランスを保つためにも、今こそもう一度読み継がれるべき名著だと思う。はっきり言って本書には相当の毒が含まれている。ただ、毒にも薬にもならないような希望を煽るだけの自己啓発本よりは、余程人生の真実が含まれているように感じる。