さわや書店 おすすめ本
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no.4062020/7/6UP
本店・総務部Aおすすめ!
海の見える理髪店 荻原浩/集英社文庫
全6編の短編集。主人公たちは皆、順調とは言えない人生を送っている。それを口にすることはなく、事態が好転する話でもないのに、読後くすぐったいような気持ちになる。それはラストにごくさりげなく、どこか著者の優しさや希望が伝わって来るからだ。
本書を読んでいて思い出した映画がある。それはイランの映画で、子供心はどんな国でも共通なんだと感じた『運動靴と赤い金魚』。大人が観ても切実に胸に迫るのは、誰でも必ず子供時代という経験をしているからなのだろう。決して思い通りの結末ではないのに、言葉のないラストシーンで思わずニヤついてしまう。それは本書同様、非常にさりげない形で未来に対する希望と優しさが、画面に捉えられているからである。