さわや書店 おすすめ本

  • no.330
    2019/5/23UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか 矢部宏治/講談社+α文庫

    文庫化していたので改めて読んでみた。本書を読むと、現在抱えているあらゆる諸問題の根底には、戦争に負けたという事実がいまだに重くのしかかっているのがよくわかる。
    敗戦から経済大国へと歩んだ道のりは、綱渡りのようなギリギリの交渉の末にたどり着いた奇跡であり、当時を想えばそれは最善の道を経て今があるということに変わりはない。ただし、それを成し遂げるために多くの犠牲を払い、かなり特殊な条約やその他の条件を受け入れてきたのもまた事実だろう。
    誰がいいとか悪いとかイデオロギーとかには一切関わらずに、政治家・官僚・研究者・民間人など日本の頭脳を全て結集させて、歴史とその経緯を丹念にひも解き、ボタンをかけ直していく地道な作業が必要だと感じる。正直、難しいことはよく分からないが、特殊な経緯を辿ってきた日本だからこそ、平和への思索を、祈りを、その険しい道筋を、今の世界に示し続けるのは、重要な意味がある事のように思う。