さわや書店 おすすめ本

  • no.295
    2018/12/18UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    逃北 つかれたときは北へ逃げます 能町みね子/文春文庫

    ネガティブ観光案内、北への旅。どうぞいらっしゃいという観光地ではなく、あえて何もない寂しいところの魅力を紹介している。東北人としては微妙だが、北への愛情は充分に伝わり、ああわかるなあと思う部分の多々ある傑作エッセイだ。
    個人的には、大学時代にワンダーフォーゲル部で山へ行き、何日かして帰ってくる時の電車の中で、無事に帰って来たなという安堵と共に、ああまた下界の雑踏と喧騒の中に戻ってしまったなという思いが交錯するのに似ている。山に行くのは決して絶景を見る為ではなかった。それはある意味、山へ逃げていたのかもしれない。
    北への旅で思い出すのが「男たちは北へ」という小説だ。ある男が東京から青森まで自転車で行くというだけの物語。その間にいろいろと絡んでくるが、そんなものとは関係なく我が道を行く主人公が清々しい。こちらもぜひご一読を。
    先日さわや書店は青森駅ビルにラビナ店をオープンした。青森県では野辺地店に続き2店舗目。開店準備で大雪のなか青森に行ってみたが、底知れぬ魅力のあるところだと改めて感じた。本格的な雪の季節にこそ、みなさん北へ逃げにいらっしゃい。