さわや書店 おすすめ本
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no.2862018/10/29UP
本店・総務部Aおすすめ!
談志最後の落語論 立川談志/ちくま文庫
私は落語を知っている訳でも特別に好きな訳でもないが、2011年に亡くなられた著者の落語には、雑談も含め妙に引き込まれる何かがある。そこには嘘がなく、一流の凄みのようなものを感じるからだ。
一見、破天荒とも思える言動の中には考え抜かれた物事の本質と、一抹の恥ずかしさや照れ隠しが滲み出る。北野武氏の映画や本にもこの辺りの感覚を感じることがある。これを落語風に表現するならば「江戸っ子の了見」とでも言うのか、ある種の品の良さを感じる。美談や愛などをことさら強調しておきながら、どこか下品で胡散臭い人間を笑い飛ばしてしまうのである。
『らくだ』『居残り佐平次』『鼠穴』『金玉医者』『文七元結』そして『芝浜』。映画でも落語でも、同じ話を何度聴いてもやっぱりいいなあと感じるのは、世の中がどう変わろうとも確実に名作だからであり、それを現代で体現させるのが名人芸というものなのだろう。