さわや書店 おすすめ本
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no.2792018/10/8UP
フェザン店・長江おすすめ!
コルトM1851残月 月村了衛/文春文庫
江戸時代を舞台に、「コルトM1851」という銃を登場させる―これが本書の肝となる。江戸時代に銃というのはちょっと想像しにくいが、さすが月村了衛、あり得そうな設定をうまく作り上げる。
刀と銃では、銃の殺傷能力が高すぎて勝負にならないのではないか、と思うかもしれない。しかし、そうではない。当時の銃は、6発の弾を込めるのに、訓練を積んだ主人公であっても3分半掛かるというような代物だった。主人公は、腕っ節自体は強くはない。拳銃がなければ、戦いの場に出てこられるような男ではない。殺傷能力は刀と比べて圧倒的だが装弾のための時間がネックになる、という設定が、この物語を実に絶妙なバランスで展開させる要素となっている。
主人公の郎次は、江戸の暗黒街で「残月の郎次」と呼ばれている極悪人だ。共感できる要素が薄いと言わざるを得ない主人公ではあるが、郎次が物語の途中ですべてを失う展開になってから状況が少しずつ変わっていく。そうしなれば生きてはこられなかった悲哀を背負い込んだ男の、闘う理由が変化してからの怒涛の物語に圧倒されてほしい。