さわや書店 おすすめ本

  • no.241
    2018/5/29UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    瑕疵借り 松岡圭祐/講談社文庫

    そんな業者が本当にあるのかどうかは知らないが、賃貸物件の賃借人に告知義務のあるワケあり物件に対し、一旦専門の「瑕疵借り」を住ませることで、その瑕疵を和らげよう、あるいは無かった事にしようとするものらしい。資金洗浄ならぬ賃貸物件洗浄といったところか。明らかに怪しげなこの「瑕疵借り」だが、その男が冷静な分析で瑕疵の原因である問題を、鮮やかに解いて立ち去る連作短編ミステリーだ。
    賃貸物件。――人生の中である時期、短期間だけ住んで刹那的に通り過ぎていく場合もあるだろう。しかし、どんな時代の一時期であったとしても、何気ない今のこの瞬間をもっと大切にしなければならないと、読後強く感じさせる。非常に心に残る4つのショートストーリー。