さわや書店 おすすめ本

  • no.233
    2018/5/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    始末屋 宮本紀子/光文社文庫

    華の吉原で勘定の焦げ付いた客に対し、遊郭の主に代わって借金の取り立てを請け合う「始末屋」。そこで働く、陰のある眼をした若い男の物語。ある花魁から名指しで受けた取り立て依頼の一件が、自らの悲痛な過去と交わる。
    始末屋という非常に生々しい稼業の中から、吉原で働く人々の現実や心の機微に触れ、徐々に思慮を深め成長してゆく。暗い過去の殻を脱ぎ捨て、新たなる一歩を踏み出すまでの成長物語であり、王道の人情時代小説だ。
    吉原で思い出すのが落語の『紺屋高尾』や『文七元結』などの人情噺。故・立川談志師匠が照れまくり言い訳をしながら演っていたのが何とも言えず味わい深く、本書同様江戸の粋を感じさせてくれる。