さわや書店 おすすめ本

  • no.184
    2017/10/17UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 ウェンディ・ムーア/河出文庫

    本作は、18世紀のイギリスに生きた、ジョン・ハンターという解剖学者の生涯を描いたノンフィクションです。このジョン・ハンターは、「ドリトル先生」や「ジキル博士とハイド氏」のモデルになった人物であると言われていて、帯には『奇人まみれの英国でも群を抜いた奇人!』とあります。
    僕はこの前情報を読んで、解剖医としては飛び切りの腕を持つのだけど死体にしか興味がなく気味悪がられている変人、というようなイメージを持ちました。でも実際は全然違いました。このジョン・ハンターという男は、まさに近代医療の基礎を作ったと言っても過言ではない男でした。解剖医としてだけではなく外科医や生物学者としても一流で、また周囲の人間にはかなり慕われていて、世間的な地位ももの凄く高かったようです。
    科学的とは言い難い治療法が蔓延する社会で、それまでの常識を一切信じずに、自ら仮説を立て検証するということを繰り返すことで近代的な治療法を確立した男の生涯に渡った闘いを描いています。信念を持って医学の向上に努め人生のすべてを捧げた男の生涯は素晴らしい。