さわや書店 おすすめ本
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no.932016/11/22UP
フェザン店・長江おすすめ!
凍りのくじら 辻村深月/講談社文庫
高校生の理帆子は、いつでも現実を醒めたような目で見ながら生きている。誰にも心を開くことのない、ちょっと醒めた女の子。5年前失踪した父の影響で理帆子もドラえもんが好きになり、かつて藤子・F・不二雄が「SF」を「少しフシギ」と言ったように、周りの人間を「少し◯◯」と評するのが好きだ。
ある夏図書館にいると、「写真を撮らせてほしい」という青年に出会う。別所あきらと名乗ったその青年はひどく穏やかで、聞き上手だった。理帆子は、普段他人には決して見せない部分まで、別所には見せるようになっていった…。
かつてこの本に、「どこかにきっと、あなたのことが書いてある」というコピーをつけて売ったことがある。理帆子を始め、ちょっと真っ当には生きられない者たちが描かれる物語だが、その中の誰かに強く共感してしまうのではないかと思う。
僕は、理帆子にも別所にも若尾にも共感してしまうのだ。