さわや書店|SAWAYA Official Web Site

no.155

2017/6/20UP

本店・総務部Aおすすめ!

花の命は
ノー・フューチャー

ブレイディみかこ
ちくま文庫

シビれた。美しい一文も、カッコイイ言葉のひとつも出てこない。にもかかわらず、である。96年より英国ブライトン在住の著者による、ハードボイルド・ビターエッセイとも言うべき作品集。恥ずかしながら著者について何も知らず、ただ単に表紙買い、というよりタイトル買いであった。第一章の一発目にタイトルの表題作があるので、まえがきから2~3ページだけでも、試しにぜひ読んでみてほしい。それはそうと、こういう表紙買いのインスピレーションは、やはりほどよい広さの本屋に限る。新たな価値を発見する確率が高いからである。ネットだとその逆のパターンが多いように思われる。根拠はない。が、そう思う。

no.154

2017/6/20UP

フェザン店・長江おすすめ!

放浪の天才数学者
エルデシュ

ポール・ホフマン
草思社文庫

奇人変人の多い数学者の中でも、とびきりの変人と言われるのがこのエルデシュだ。定住地を持たず、世界中の数学者の家に寝泊まりしては放浪を続けた。所持品は汚いカバン半分ほどしかなかった。よく浮浪者と間違われ、また極度の方向音痴だった。生活に関するあらゆることに疎く、彼と生活したことのある人間は皆、何らかの迷惑を被った。しかしそれでも彼は愛され続けた。
エルデシュは、数学者としてももちろん凄い。共著者400人以上、書いた論文1000本以上という驚異的な数字で、しかもその論文のどれもが素晴らしいものだという。過去ありとあらゆる数学者の中で、書いた論文はあのガウスに次いで多いらしい。数学者は40代で一線を引退すると言われるが、エルデシュは83歳で生涯を終えるそのまさに直前まで数学漬けの生活を送っていた。何よりも、若い数学者を育て続けた生涯だった。
数学そのものについての記述は少なく、一人の奇人についての自伝として、数学が苦手な人にも面白く読める一冊だ。

no.153

2017/6/13UP

フェザン店・長江おすすめ!

星を継ぐもの

J・P・ホーガン
創元推理文庫

火星や木星に探査船を送れるようになった2020年代の終わり頃、アメリカのとある機関が月の探査中、死後5万年以上経過している人類の死体を発見した。チャーリーと名付けられたその死体は様々な謎を呼ぶ。5万年前と言えば原始時代だ。当然人類はまだ月に行ける文明などない。ありとあらゆる専門家がこの謎を解こうと集結するが、さらに驚くべき発見が待っていた。なんと木星の衛星であるガニメデから、地球の物ではありえない宇宙船が発見されたというのだ…
SF作品だけど、同時にミステリでもあります。それも非常にスケールの大きなミステリです。しかも、謎の解明が至ってシンプル。「SFはちょっと…」と思っている方、騙されたと思って読んでみてください。本格ミステリが好きな方だったらまず嵌まると思います。僕は外国人作家の作品があまり得意ではありませんが、一気読みでした。

no.152

2017/6/6UP

本店・総務部Aおすすめ!

世の中それほど
不公平じゃない

浅田次郎
集英社文庫

言いたい放題の多様な価値観が完全に情報過多の現代。はっきりと正面切って筋を通し、当たり前の事を当たり前だと大声で言ってくれるような清々しさが本書にはある。人生相談だが、『週刊プレイボーイ』誌上での企画なので、「よくこれを浅田次郎氏に聞けるな!」と思うばかばかしいものもあり、それはそれで面白い。若手編集者太郎さんとの掛け合いという構成で、この太郎さんの聞き方というか引き出し方も素晴らしいと思う。伊集院静氏「悩むが花」、内館牧子氏「心に愛、唇に毒」、佐藤愛子氏「九十歳。何がめでたい」なども竹を割ったような気持ちのいい主張の中で、物事の本質を衝いている。作家というのはやっぱり凄いなと改めて思う。

no.151

2017/6/6UP

フェザン店・長江おすすめ!

ヒトゲノムを
解読した男

クレイグ・ベンター自伝

クレイグ・ベンター
化学同人

クレイグ・ベンターは、世界で初めてヒトゲノムを解読した科学者として知られている。ヒトゲノムの解読競争は当時熾烈を極め、その聖杯を掴むことは科学者にとって栄誉なことだった。彼はその聖杯を掴んだが、しかしそこに至るまでの道のりは、数々の妨害と不運が度重なる、波乱万丈のものだった。
EST法という、現在の遺伝子解析の主流となる手法を自ら開発しながら、当時は独創的な手法過ぎて誰にも認められなかったこと。所属する研究所との軋轢。そして、DNAの二重らせん構造の発見者の一人であり、科学界の重鎮であるジェームズ・ワトソンとの対立など、常に苦難の連続だった。自らの利益より、科学の進歩を常に最優先に考えていた一人の高潔な科学者の波乱の人生を自らの手で記した作品だ。

no.150

2017/5/30UP

フェザン店・長江おすすめ!

寄生虫なき病

モイセズ・ベラスケス=マノフ
文藝春秋

  本書は、次のような疑問に答える作品である。
【なぜ自己免疫性疾患やアトピーなどの病気は、発展途上国ではほとんど見られず、先進国でここ最近急増しているのか?】
【なぜ兄弟がいる子は、長男よりも喘息やアトピーになりにくいのか?】
【花粉症にかかる人間はなぜ、先進国の富裕層の人間からだったのか?】
【世界の人口の1/3の人間が未だに寄生虫に感染しているのに、症状が出ることはほとんどない。寄生虫は一体人間の体内で何をしているのか?】
これらすべてを包括的に説明する、従来の学説とは矛盾するある考え方が、ここ最近真面目に研究され始めている。それが、《人間は、寄生虫や腸内微生物を失ったがために、免疫関連疾患に冒されるようになった》というものだ。
本書は、この仮説を裏付ける様々な実験を紹介しながら、何故寄生虫や微生物が様々な病気の発現を防ぐのか、人類と「腸内細菌叢」との関わり方はどうなっているのかなどついて深く考察する。

no.149

2017/5/23UP

本店・総務部Aおすすめ!

料理狂

木村俊介
幻冬舎文庫

容易に真似のできるものではないが、天才シェフたち10名の修業時代の苦労話や次世代に向けてのアドバイスが聞き語り形式でまとめられている。あらゆる失敗談から仕事に対する姿勢や生き方までが惜しげもなく語られている。業界の先頭集団を走り抜け、酸いも甘いも噛み分けた年代だからこそ言える重みと説得力のある言葉が続く。それぞれの視点や方法論は違えども、共通して言えるのはもの凄い情熱とハードワーク。そして一発当てる事よりも継続する事の難しさや基本の大切さなど、意外とベーシックな中にこそプロフェッショナルたる所以があるように思う。どんなビジネスでも生活でも、時代が違うとは言え多くの示唆を与えてくれる一冊だ。

no.148

2017/5/16UP

フェザン店・長江おすすめ!

流れとかたち

万物のデザインを決める新たな物理法則

エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン
紀伊国屋書店

本書は、熱工学の世界的権威である著者が提唱している「コンストラクタル法則」について書かれたものだ。この法則自体は、僕の理解では説明することが難しい。
法則自体をうまく認識することは難しいが、著者が提唱するこの法則は、科学の細分化された領域を無効にする、という点で非常に興味深い。地球上に存在するありとあらゆるものを「有限大の流動系」と捉えることで、その存在にシンプルな理由を与えることが出来る、と著者は主張している。
またこの法則は、「存在理由」を説明する、という点でも面白い。例えば、「木というものが何故存在するのか?」は、これまでの科学では説明不可能だが、この法則ではそれに理由を与えることが出来る。
理論自体は非常に難しいが、扱われている実例は興味深い。例えばこの法則は、「なぜ、短距離走は黒人が強いのに、水泳は白人が強いのか」を説明してしまう。今後この法則が、科学の世界で主流となる日が来るかもしれない。

no.147

2017/5/9UP

本店・総務部Aおすすめ!

戦争に
チャンスを与えよ

エドワード・ルトワック
奥山真司
文春新書

理想論を声高に叫ぶのも必要な事だとは思うが、一方で見たくない現実を直視し、静かに選択をしなければならない時もあるだろう。世界情勢は複雑さを増して、対岸の火事どころの話ではなくなった。悲しい事だが人間の歴史の中で戦争が無くなった例はないので、平和を求めながら備えと戦略だけは必要だと思う。こういった議論は主義や信条などの話と混同され、話したり考えたりするだけでもタブーとなってしまうのはいかがなものか。いじめの問題でもそうだが、人類史上無くなった事のない問題に対しては、無くなることはないという前提でより現実に沿った議論や対策が必要だ。きれい事だけで本質を隠したりするのは最悪の結果を招く。本書の全てに賛成はできないが、考えさせられる一冊だった。

no.146

2017/5/9UP

フェザン店・長江おすすめ!

ヒミズ

古谷実
講談社漫画文庫

中学生である住田の夢は、「一生普通に暮らすこと」だ。自分に、超絶的な不幸も、超絶的な幸運もやってくるはずがない。だから、普通を目指す。あらゆる場面で、影のように、目立たず、ひっそりと生きていく。
住田は既に、自分が人生をどうにか乗り切るだけの気力がないことを悟っている。はっきりとした理由があるわけじゃない。原因がはっきりしているならば、例えば、家庭環境にそのすべての原因があるのなら、原因をぶっ叩けばどうにかなる。でも、違う。それは目に見えないものだ。言葉に出来ないものだ。誰かに伝えられないものだ。
そんな「漠然とした絶望」の象徴として登場するのが、住田の周囲に時々現れる「謎の怪物」だ。
住田は、「手触りのある絶望」を増幅させることで、その「漠然とした絶望」を駆逐しようとする。狂気に囚われた住田が辿り着いた結論だ。
もしかしたら自分もこんな人間になっていたかもしれない。この作品に漂う狂気は、読者にそんな気持ちを抱かせる。

さわや書店|SAWAYA Official Web Site
IBCラジオ
2017/06/22
「なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか」
立川談慶
日本実業出版社
紹介者
フェザン店・田口
IBCラジオ
2017/06/15
「会津執権の栄誉」
佐藤巖太郎
文芸春秋
紹介者
フェザン店・田口
IBCラジオ
2017/06/08
「バッタを倒しにアフリカへ」
前野ウルド浩太郎
光文社新書
紹介者
ORIORI店・松本
IBCラジオ
2017/06/08
「まじ文章書けないんですけど」
前田安正
大和書房
紹介者
ORIORI店・松本
おばんですいわて
2017/06/02
「朽ちゆく世界の廃墟」自由国民社
紹介者
本店・竹内
おばんですいわて
2017/06/02
「バッタを倒しにアフリカへ」光文社新書
前野ウルド浩太郎
紹介者
本店・竹内
読売新聞
2017/06/02
「我らがパラダイス」毎日新聞出版
林真理子
紹介者
本店・竹内
IBCラジオ
2017/06/01
「ゼロと呼ばれた男」 鳴海章
集英社
紹介者
フェザン店・田口
読売新聞
2017/05/26
「超ソロ社会」PHP研究所
荒川和久
紹介者
本店・栗澤
IBCラジオ
2017/05/25
「かくれ高血糖が体を壊す」
池谷敏郎
青春出版社
紹介者
本店・大池